prose of dog


ミーティングも終わり、レギュラー用の部室では皆が思い思いにくつろいでる。
長太郎はひっきりなしに喋っている岳人と忍足の話を聞きながら、一緒にパソコンの画面を覗き込んでいた。
跡部と話していた宍戸は、そんな様子を横目で眺める。

(ああやって他のヤツといる時は、おとなしいんだよなぁ…。)

静かで落ちついた印象と、はしゃぎながら自分と話す時の印象。

(あれ?………なんだか、そんなギャップどこかで見た気がするんだが。)

「宍戸?あぁ…アレか。相変わらず騒がしいな。」

思わず首を傾げていたらしく、跡部が鼻でふん、と笑った。
今のレギュラーメンバーは、前と比べてずいぶんと騒がしい、と改めて宍戸は思う。

「…そういえば、お前昔はああいう類嫌いじゃなかったか…?」

そしてそんな場所に跡部がいることも昔を考えれば珍しい。宍戸の中で跡部の第一印象は「俺様の目の前で騒ぐんじゃねぇ。」なのだから。
丸くなったもんだな、とつつくと、跡部が片眉をあげる。
「まぁ、騒がしいのはあまり好きじゃないが…お前のようにまめに躾ける気にもなれなくてな。」
「"しつけ"かよ。犬じゃあるまいし。」

度量が上がったと言え、と呟く跡部に苦笑しながら、それでもふと思う。

(犬?…あぁ、そうか。近所のハスキーと同じなんだよな、あのテンション)

遠くから眺めている時はいつもじっと寝ているようなのに、たまに近くを通りかかると、喜び勇んでわふわふと飛びかかってくるあの大型犬。
そういえば、アレに似ている、と。
今度は何かやらされているらしく、長太郎は先程まで岳人が座っていた椅子に座らされてパソコンを構っている。
言ってやったらどんな顔をするだろう、と思いながら、宍戸は跡部と共にひときわ騒がしいその一角へ近づいていった。


    *‥‥*‥‥*‥‥*‥‥*


「お前…何かに似てると思ったら…」
「?」
「近所のハスキーと同じなんだよな、テンションが。」

けなしたつもりはなかったのだが、ぽふぽふと頭に手をのせながらそう言ったとたんに、何故か長太郎はショックを受けたようだった。

「ハスキー…ですか。」
「あぁ。…?どうした?」
「宍戸っ…お前タイミング良すぎ!!」
「ほんまやな??ははははは…!」

やや凹んでしまった様子の長太郎。訳がわからずに宍戸は岳人の方を見た。

「…何の話してたんだ?」

腹を抱えて爆笑していた忍足と岳人は、涙を拭きながら長太郎と宍戸を交互に見て、また笑う。

「『生まれ変わって動物になるなら何か』ってやつ。ネットで占えるんだけどさ、侑士がやったらモラル値低すぎて来世ミミズとかになりやがんの。」
「コイツ酷いねんでー。自分もカエル程度だったくせにそれで勝ち誇るんやから。」

ちょっと聞いてや!と、おばちゃんのノリで忍足は宍戸を捕まえる。宍戸は岳人が向かっているパソコンを覗き込みながら、隣の椅子に腰を下ろした。

「で、さっき鳳にもやらせたんだけどさ。その結果が…」
「『犬』だったんですよ…。」
「そしたらその瞬間にお前が来たんだよ。」

しょぼん、として長太郎が言った。
その様子を見てまた笑いながら岳人が宍戸の背中を叩く。
どうやら、来世どころか現在でも犬なのか、とちょっと悲しくなったらしい。

「そんなに凹むようなことか?」

現実主義の宍戸には、来世なんて別にどうでもいいし、今現在長太郎が犬なわけではないのだからそこまで気にすることじゃないだろうと思ってしまうのだが。
よしよし、ととりあえず頭をさらに撫でてみる。

「でもまぁ…どうせなら柴犬…もっと大型犬でもいいかな。」
「お前…どういう立ち直りかただよ…」
「向日先輩のカエルよりはマシですもんね。」
「あ、言いやがったな?!」
「…宍戸さんみたいな人に飼ってもらえるかもしれないし」
「結局宍戸かぃ。ホンマに懐いてるな、お前…」

(…まぁ、お前みたいな犬なら飼ってもいいかもな。)

宍戸がちらっと横を見ると、どうやら今度はその占いに跡部が挑戦しているらしい。

「宍戸さんもやってみません?」
「俺もう1回やろっと。」
「2回目は反則やろ、岳人!」
「てめーら静かにしやがれ!耳もとで五月蝿い!!」
「みんな何やってるの??」
「ジロー起きたのか?今なぁ…」

笑いが溢れる。
騒がしくても、こんな日々がやっぱり好きだ、と宍戸は思った。

相変わらず、手は長太郎の頭の上にのせたままで。


『世界は愛で廻ってる!?』のおまけSSでした。
長太郎=ハスキー?という1P漫画を描いていて、そこから発展させてみました。
最近は日吉まで犬(柴犬とかの和犬)に見えて困ります(爆)


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